こどもの矯正日記
症例だけでなく、小児矯正に関する情報を発信いたします
上顎縮小装置
上顎前歯部の突出感が主訴の患者様。
お顔を拝見しても明らかに上顎が大きく鼻下から上顎前歯までの距離も長いです。いわゆるガミースマイルです。セファロ分析、模型分析でも上顎の過成長が著しく審美性の回復のためには抜歯は必須かと思われます。検査結果をもとに現状をご説明し、抜歯を含めた何通りかの治療計画をご提示し、コンサルテーションをすすめました。ご本人もお母様も抜歯は望まず小児矯正では非抜歯で可能な限り突出感を改善し、成人して審美的に満足できないようだったらその時抜歯矯正を考えるとの結論に至りました。
上顎縮小と下顎を前方へ誘導する機能を付与した装置をまず6か月使用していただき再評価をします。
唇側誘導線も前歯部のリトラクションと圧下に効くように一工夫しています。
本格矯正も予定していますが、まずは咬合誘導で可能な限り前歯部の突出感の改善ができることを期待をしています。
精密検査
矯正治療を希望されている患者様には精密検査(初回のみ有料)を必ず受けていただきます。
検査項目は:パノラマレントゲン写真
頭部X線規格写真
口腔内写真
全身写真
歯型とり
カリエスリスクテストなどです。
必要に応じて小さいレントゲン写真やCTなどをとる場合もあります。
頭部X線規格写真は頭蓋と顎との関係を調べるもので矯正治療の診断には欠かせません。治療途中にも何回かとらせていただく場合もあります。
頭部X線規格写真を治療前、途中、で比較することにより治療の成果も判断できます。また、成長の方向をとらえることによってどの方向に抑制したらよいかもしくは促進したらよいかの指標にもなります。治療の精度を高めるためには大切な検査です。
頭蓋骨ごと映るレントゲン写真なのでX線量をご心配される方もいらっしゃいますが当医院で使用しているセファロでのX線量は通常のものより被爆量は小さく患者様へのご負担の少ないものです。
また歯型とりも重要です。嘔吐反射の強いお子様にはつらいものですが、お口の中を模型として再現し診査診断するためにはなくてはなりません。嘔吐反射の強い方はご相談ください。
検査の結果は全てお見せしながらご説明します。ご自身の頭部のレントゲン写真、お口の中の模型なかなか見ごたえありますよ。
咬合誘導の期間
いつ、どんな装置で、どれくらいの期間治療が必要なのか?気になりますよね。患者様によって改善しなければいけない問題点は異なりますので一概には言えませんが、おおよその目安についてお話しいたします。
今回は期間についてー
咬合誘導ではまず床装置(取り外し式の装置)を使用するのが一般的です。床装置の場合、一つの装置で6か月が目安です。当医院では3~4か月で効果が出ています。装置の効果が本来歯が動くべき方向、顎が納まるべき方向に作用している場合、無理なく結果がついてきます。顎の横幅の拡大や下顎の前方への誘導などは良い例です。(*改善したい症状が複数で装置も複数使用する場合は期間は長くなります。)
その後、咬合誘導で得られた良い位置で歯や顎が安定するまで保定装置を入れて歯や顎が元の状態に戻るのを防ぎます。当医院では歯を動かすために要した時間と同じくらい保定期間をとっています。
ですから咬合誘導の治療そのもは6か月と設定した場合でも、何らかの装置がお口の中に入っているのはそれ以上ということになります。一般的に歯や顎を動かして治療している期間を治療期間と考えて、咬合誘導や矯正治療の期間をご提示します。保定期間についてもご提示していますが、治療後に必要な処置として保定のことお話ししています。患者様の立場からすると装置を装着している期間全てが治療期間と感じられても不思議ではありません。
なるべく誤解のないように治療期間についてもご説明するように心がけています。治療方針のご説明の際、わかりにくい点はお気軽にお尋ねください。
春を探しに
今年初のタンポポ 沈丁花
今日は休診日なのでちょっと寄り道しながら親水緑道沿いを散歩。暖かいですね~。今年初のタンポポの花、発見です。
沈丁花はもう花開きそうです。沈丁花の香りが待ち遠しいです。カンヒサクラもつぼみがパンパンですね。ソメイヨシノより一足先に咲く桜です。こぶしも堅そうですがつぼみが膨らんできています。
春の親水緑道は花いっぱいになります。このほかにも、たくさんの白い小さな花が可憐な雪柳、鮮や かな黄色のレンギョウ、さらに深い黄色の山吹、ハナミズキもすがすがしく好きです。
緑道沿いの散歩の楽しい季節がもうすぐそこまで来ているようです。
タイミング
咬合誘導を効果的に行うには何と言ってもタイミングが大切。
術者側の立場で考えると心配な要因はなるべく早く取り除いてずっとコントロールし続けていられると安心は安心なのですが・・・そうなると永久歯への交換期から全ての永久歯が生えるまで何年も患者様は治療のために装置を入れ続けたり、通院しなくてはいけなくなってしまいます。
ですから、矯正治療のご相談を受けてもまだ早いという場合は最適の時期が来るまで待っていただくことも少なくありません。
その中のお一人・・・とても小さいお口で叢生が出始めている患者様。お体も小さく、歯のはえかわりも遅く小学校高学年になるまでは経過観察でOKと思っていたのですが下顎乳犬歯がもうグラグラし始めてきました。乳犬歯の下からは大人の永久歯が萌えてきます。乳犬歯の倍以上の大きさの永久歯のスペースは今のところ全くありません。もう少し永久歯への交換待っいて欲しいのだけど・・・永久犬歯の萌出とタイミングを合わせて拡大すると歯を支える骨もしっかりついてきてくれるので検査含め、そろそろ準備に取り掛からなくてはいけません。少し予定が早まる旨もご説明しお子様のモチベーションも高めて気持ちよく歯並び治療スタートさせたいです。
シーラント
シーラントというのは簡単に言うと歯磨きがしにくく汚れが残り易い奥歯のかみ合わせの部分にプラスチックを流し込んで虫歯を予防するという方法です。6歳臼歯などが萌出途中で咬む面の歯磨きが難しいときに効果があるといわれています。
歯を削ることもなく、麻酔も必要ないのでシーラントを施すことは簡単です。でも、シーラントをする前にやっぱりその部分の歯磨きができていることが大切です。シーラントで予防できるのは咬み合わせの部分だけです。他の部分が磨けていなければやっぱり虫歯になってしまいますし、シーラントをしたとしてもプラスチックを流し込んだ所とご自身の歯との間には段差ができますのでそこから虫歯になる可能性だってあります。また、微妙なかみ合わせに影響することもあります。
ですから歯の溝がとても深くて他の部分はきれいに磨けているのに歯の溝だけは難しいといった場合以外は、やたらめったらシーラントをすることは当医院ではありません。萌出途中の歯が簡単に磨ける歯ブラシなどご紹介したり、歯磨き指導、フッ素塗布、PMTCを優先させていただいています。シーラントといえども歯に人工のものを入れることには変わりません。しないで済むならしない方がいいです。ぴかぴかでつるつるの歯、そのままの状態で守っていきたいなと思っています。
虫歯のなりかけって?
虫歯菌の出す酸によって歯が溶かされてしまった状態が虫歯です。初めはうっすらと歯の表面が溶けるだけなので色も白く穴も開いていません。歯の一番外側のエナメル質という部分は人間の体の中でもっとも硬い組織です。ですから、通常エナメル質が完全に溶かされて次の軟かい象牙質という層に至るまでには時間がかかります。象牙質まで歯が溶かされると通常何らかの症状(痛い、しみるetc)が出てきます。
虫歯のなりかけというのは歯の表面が溶かされ始めてしまっているけど、まだ穴にはなっていない状態をいいます。磨き残しと間違ってしまうような白くうっすらとざらざらとした状態です。そのまま、放っておくと穴があいてきます。
虫歯のなりかけは削って治療したくはありません。歯磨きをしっかりしていただきフッ素やリン酸カルシウムといった歯の再石灰化(溶けた歯を元に戻す)を促すお薬を根気よく塗布することによって歯に穴があくのを防ぐことができます。虫歯を削らずに治す唯一のチャンスが残っている段階といえます。
虫歯になって穴のあいてしまった歯は治療しなければ悪くなるだけで治ることはありません。でも、歯を削って治療をするというのは穴のあいたゴムボールにつぎはぎをして修理するようなものです。歯の寿命を考えた場合、削らずに済むならば極力削らずに治したいです。その分患者様にも歯磨きを頑張っていただかなければいけないのですが、頑張っていただいだけの効果はあげられていると自負しています。虫歯、削らずに済む段階で何とかしたいものです・・・
目立たない装置
上顎の急速拡大と異なり下顎の横幅の改善はゆっくりと広げなければ安全に歯は動かせません。このクレアという装置はチタンワイヤーを使用し、屈曲してあるワイヤーが元に戻ろうとする力を利用して歯を動かすことができます。従来の床装置やリンガルシステムで使用するワイヤーより弱い力が長く続くという長所がチタンワイヤーにはあります。また、生体に親和性の高いチタンでできているのでより安全な装置といえます。
お写真の患者様は下顎前歯部の叢生の改善中です。アライナーと同様に少しづつ歯が動いていくので効果が目に見えて分かりにくいので毎回横幅の改善度を計測しています。装置が取り外し式の上目立たないのも患者様には喜ばれています。
アライナー


上左:上顎のみアライナー装着 上右:デジタルノギス
下左:アライナー 下右:セットアップ模型 元の歯並びの模型
アライナーでの治療は矯正歯科に携わる者にとってはまさしく夢の治療ともいうべき可能性に満ちた画期的な治療法です。従来の方法では考えられないようなケースにも応用できたりします。
元々の歯並びから動かしたい位置へ少しづつ歯をずらして並べたセットアップ模型に合わせてマウスピースの様な透明の装置を作り患者様に終日使用していただくというものです。決められた使用時間を守っていただき、何個かのアライナーを使用し続けることによって意図した方向に歯が並んでいきます。一回の移動量は0.8mm程度なので床装置やブラケット治療のように劇的に歯が動くというものではないので、ともすると患者様の気持ちがついてきてくれなくなってしまう心配もあります。
当医院では治療前と一回目の移動、2回目の移動・・・とその都度歯の移動量を測定しています。コンマ2桁の単位での計測なので使用するノギスは専用にカスタマイズしたものでピンポイントで測定点を正確にとらえられるにしています。拡大時36.25mmが37・21mmになったとか、そういう単位での仕事です。でも、確実に歯は動いていきます。
患者様にも治療経過のご報告書はお渡しし、歯が実際に動いていることをお知らせしています。興味深いのは動きが悪かった時と頑張って使用時間を守っていただいている時とでは計測値に差が出ることです。患者様のモチベーションの維持にも経過報告書は役立っているように思います。アライナーもまた取り外し式のものなので使っていただけるかどうかが治療の成否を分けるからです。
小さなお子様には残念ながら応用はできないのですが、咬合誘導後若干の歯並びの乱れを整えたいなんていう場合には有効です。ブラケットは付けずに仕上げが可能ということになります。新しいシステムなので今後の臨床応用での実績が期待される装置です。
局所麻酔
歯科医院でいやなこと、キ~ンという歯を削る音、消毒薬の臭い、歯茎にする注射etc,わかってはいます。嫌われちゃう理由。
でも、虫歯の治療に局所麻酔は欠かせません。もちろん、虫歯の治療の経験がなくまだ恐怖心が強いようなお子様で緊急性がない場合いきなり麻酔を使った治療をしたりはしません。歯科治療に使用する機械や道具を見てもらったり触ってもらったりしながら、”何をされるかわからない”という恐怖心を取り除くように努めています。絶対に痛みを伴わない処置からスタートして、本格的な虫歯の治療へと移行します。でも、本格的な虫歯の治療をするうえでは局所麻酔が必要になることも多いです。乳歯や萌えたての永久歯は見た目以上に虫歯が進行していることが多く麻酔を使った方が治療中お痛みなく安心して安全に治療ができるからです。
当医院では塗り薬の麻酔(一般的なものより濃度が一番高く粘膜面の麻酔効果が高いです)をしっかり効かせてから、一番細い注射針を使用し、極力麻酔をする時のお痛みを軽減できるようにしています。従来のものに比べると痛みの軽減ができる電動麻酔器も取り入れています。それでも、ちょっとはチクッてしてしまうんだけど術中”えっ?もうしたの?”とか言われると心の中でガッツポーズ。私たちも日々何とか歯科医院でのいやなこと減らせるように努力してします。
虫歯かもしれない・・・と思ったら、痛くなる前に早めにご相談ください。
矯正治療とプラークコントロール
治療前:左 右
床装置にて拡大6ヶ月後:左 右
矯正治療をする際には歯磨き指導(TBI)は欠かせません。一方的な指導や歯科医院だけでのクリーニングにならないためにも歯磨きの大切さをお話し、お子様がご自身のお口の健康に関心を持っていただけるように努めています。
お写真の患者様は骨格性の反対咬合を伴った交叉咬合の患者様です。上顎の劣成長が著しくさらに左側切歯は矮小歯で歯列弓はとても小さかったため上顎の拡大を6カ月しました。反対咬合と交叉咬合は6か月で改善していますがまだ前歯の咬み合わせは浅く安心できる咬合状態ではありません。チンキャップで下顎の前方への成長を抑制しながら永久歯列の完成まで経過観察中です。長いおつきあいになりそうです。無事きれいな永久歯列が完成するまでお互いに頑張っていきたいと思っています。
さて、注目していただきたいのは、歯磨きの改善度です。上手に磨けるようになっているので歯が輝いて見えませんか?当医院の矯正治療で得られる効果の一つとしてお子様の歯磨きの改善が挙げられます。これくらい上手に歯磨きができるようになったら虫歯の心配はなくなります。これからも一緒に頑張ろうね。
FKO
上顎前突や歯性の反対咬合のお子様で10歳未満の場合、このFKOという装置がかなり有効です。上下の歯にしっかりとはまるようにはいるので、ちょっとびっくりされてしまうこともありますが夜間のみ半年程度の使用で良いという長所があります。
お写真の患者様は上前歯の捻転と突出があるのでちょっと装置セットの際に前歯の改善にも効果のある工夫をしています。一つの装置であれこれと欲張るのは良くないのですが第一期治療のうちに治して差し上げられるものは治しておきたいと思い、手を加えることもよくあります。お世話になっている技工士さんには手間をかけてしまっているのですがいつも素晴らしい技工物を提供してくださいます。ありがとうございます。精度の良い装置、これもまた咬合誘導にはなくてはならないものです。
第二大臼歯って?
6歳前後に乳臼歯の後ろから萌えてくる歯を6歳臼歯と一般的に呼びます。文字通り6歳ごろにはえてくる永久歯で、咬み合わせを決定するとても大切な歯です。まだ6歳前後ですとお母様の仕上げ磨きも行きとどくので、当医院の患者様に限って言えば虫歯の罹患率は減っているように感じます。
一方、小学校高学年から中学生にかけて6歳臼歯の後ろから第二大臼歯が萌えてきます。この第二大臼歯の萌出をもって永久歯列の完成となります。第二大臼歯も6歳臼歯と同じように噛み合わせには重要です。そして萌えたては歯磨きがしにくいうえに柔らかく虫歯になり易いのも6歳臼歯と同じです。しかし、お母様の仕上げ磨きには頼れない年齢になっています。ですから、お子様ご自身が口腔清掃の大切さを理解して、ご自身で磨けるようにならなければ予防が難しくなってしまいます。
でも、ご心配は御無用です。当医院の歯科衛生士にお任せください。彼女たちは歯科疾患の予防を啓蒙するプロです。お子様ご自身が一生を通じて健康な歯を維持できるように手をかえ品をかえ(?!)サポートしております。これからの歯科には何よりも大切な仕事を彼女たちは担って日々頑張っています。ご興味ある方、是非歯磨きのコツ、お尋ねにいらしてください。
萌えたての歯
立春とは名ばかりの寒さですが、木々の梢をよぉ~く見てみると日に日に木の芽が膨らみ始めています。親水緑道沿いの沈丁花などはもうつぼみがピンク色に染まってきているものも見受けられます。昔から寒いのは苦手なのですが何故かことさらに寒い2月は嫌いではありません。春を待つ命の輝きを感じることができるからでしょうか?
同じような理由かどうかわかりませんが、永久歯が萌え始めているのを拝見すると、とても希望に満ちた嬉しい気持ちになります。乳歯時代カリエスフリーで過ごしてきたお子様にも、虫歯で苦しんだお子様にも真っ白できれいな永久歯は平等に萌えてきます。なんとしてもこのきれいな永久歯は虫歯から守らねば!と一層ブラッシング指導や予防についての話に熱が入ります。
萌出途中の歯は歯肉に半分覆われていたり、歯の高さが隣の歯とそろっていないため歯磨きがしにくいです。そのうえ、萌えたての永久歯は見た目は一人前の大きさで形もしっかりしていますが実は柔らかく最も虫歯になり易いんです。萌えてから3年くらいたつと歯の性状は安定し虫歯への罹患率は低くなります。大人になってからの方が虫歯になりにくくなったと感じていらっしゃるお父様お母様多いのではないでしょうか?(ブラッシング次第ではありますが)
フッ素塗布、PMTC,予防充填等々歯科医院でできることもありますが、一番簡単で効果的な予防は日々の歯磨きです。磨きにくい個所の歯磨き指導や使いやすい歯ブラシなどお子様お一人お一人にあった歯磨き指導しております。真っ白な萌えたての永久歯、ご一緒に虫歯から守って参りましょう!!
歯並びを悪くする癖 2
<左:正常な位置へ舌が納まっているとき> <右:舌を歯に押し当てている状態>
引き続き、歯並びに悪い影響を与える癖についてお話しさせてください。
悪習癖によって引き起こされる不正咬合は、言い換えればその原因である癖を知っていれば予防が可能ということです。比較的初期で癖が定着する前、顎の成長発育が終わってしまう前なら自然に元に戻る可能性だってあります。しかし、常習化してしまったり、顎の形そのものが変わってしまうと、矯正治療が必要になります。その上、態癖を残したまま治療を終了しブラケットを外すと、また歯並びが乱れてきます。不正咬合の中には遺伝的要因があったり、突発的なものに起因するものなど予防しようがないものもあります。しかし、予防できる可能性のあるものは、患者様にもぜひ知っておいていただきたいなと思います。
上のお写真は舌癖のあるお子様です。二人とも上下の歯と歯の間に舌を押し付けてしまっています。萌出途中の歯は特に影響を受けやすく押されている歯は前方に向かって傾いて突出してきます。さらに上の歯と下の歯の間に舌が介在することによって歯と歯がかみ合わなくなってきます。お写真ではすでに開口の症状が出てきています。6か月程度はMFTをしたり、癖の除去に努めていただきます。それでも改善の兆しが見えない場合はタングガードをお勧めしています。MFTで舌訓練をしながらこの装置を6カ月程度使用することによって正しい舌の位置が習慣化するのを期待します。開口状態で全ての永久歯が萌えそろってからだと、タングガードだけでは治せなくなってしまいます。永久歯へのはえかわりの時期に歯と歯と隙間からピンクの下が見え隠れしていたら、危険なサインです。お子様のお口ちょっとチェックしてみてください。
歯並びを悪くする癖
<写真:鏡像です。上顎、下顎ともに左側のアーチが内側に張り出したカーブになっいます。>
歯並びに悪い影響を与える癖、ご存知ですか?
指しゃぶり、口呼吸、唇をかむ、爪を噛むなどは歯並びに悪影響を与える癖として浸透しつつあるかと思います。また、これらの癖は前歯に影響を及ぼす癖なので因果関係がイメージしやすく、外から見てすぐにわかるので癖の発見もしやすいです。やめないと歯並びは悪くなるよとお話しするとおうちの方にも協力が得られやすいです。
一方、小さい奥歯の歯並びに影響する癖として頬杖、枕や手を頬にあてての横向き寝などが挙げられます。えっ?と思われるかもしれません。直接歪みが見えないお口の奥ですし、歯に触れて力がかかっているわけでもないので因果関係も捉えにくいかと思います。が歯を支える顎の骨は意外と簡単に形を変えます。特にお子様の場合は驚くほど外からの影響を受けます。(ですから咬合誘導のような骨を扱う矯正治療が可能なわけです。)写真は左からの態癖のあるお子様です。外から力が加わっている部分が内側に押しやられているのが分かるかと思います。
何気ない日常の癖、少し気をつけてみてください。意外と歯並びに影響する癖ってあるんです。
どんな装置で治すの?
咬合誘導では、乳歯がまだたくさん残ってる場合は取り外し式の床装置を使用することが多いです。顎の前後的、左右的、垂直的位置関係の不正を改善するために使用するものと顎の横幅の拡大のために使用する装置などです。
写真は八重歯の治療のために拡大床装置を使っていただいている患者様です。上あごにぴったりとはまっていて真ん中のスクリューを回していくことで横幅を広げていきます。スクリューは1週間に1度おうちの方に回していただきます。最初は真ん中には全く隙間はありません。写真は5カ月使用してくださっている状態ですので真ん中に隙間があいておるのが分かるかと思います。その分だけ顎の横幅は広がっていることになります。上あごを覆われるのではじめは違和感がありますが、1週間程度で慣れていただけるようです。顎の拡大でお痛みを訴える患者様はいらっしゃらないです。正面から見たときは普通にお話しをしている程度だと装置はほとんど見えません。6か月程度の使用で期待する効果が出ます。
このように咬合誘導ではブラケットをつける矯正治療とは異なり目立たず、歯を動かす痛みもない装置を使用します。顎が小さくて永久歯が並びきらないのでは?とご心配されているようでしたらお気軽にご相談ください。
過蓋咬合
<床装置で加療4ヶ月後>
過蓋咬合を伴った出っ歯のお子様です。模型分析により歯の大きさが平均より大きいこと現時点では顎の横幅が足らないこと、またセファロ分析により下顎が後ろに下がっていることが分かりました。まだ8歳という年齢ですので永久歯の抜歯はもちろん、歯牙の大きさを小さくするためのディスキング処置(歯の両脇を削る処置)はせず、顎の位置の改善と横幅を大きくする処置を優先し加療中です。顎を前方に誘導することによって初診時、咬んだ時に全く見えなかった下の前歯が見えるようになってきています。かみ合わせの高さの改善もできつつあるサインです。ただしこのかみ合わせで安定するまでにはもう少し時間が必要です。かみ合わせが安定したら永久歯が萌えそろうまでは経過観察になり積極的な治療はお休み期間に入ります。
顎外装置について
現在当医院で咬合誘導や矯正治療をされている患者様の中には、成長発育をマイナスににコントロールしなければいけないお子様もいらっしゃいます。
具体的には生まれつき受け口の骨格をお持ちの可能性のあるお子様、上顎前突の骨格をお持ちの可能性のあるお子様です。ご両親様のお顔を拝見したり、セファロX線写真によるスーパーインポーズで骨格の変化を分析したりして、必要と判断した場合はお口の中の装置だけではなく就寝時のみ顎外に装置を使用していただき過成長を抑制します。成長期を通じてずっと使用し続けるのではなく、やはりタイミングを見て使用期間と休止期間を設けています。
すごいなと思うのはお母様の観察力です。いつも一緒に過ごされているので変化に気づき難いかと思うのですが、身長の伸びやお顔立ちの変化を見逃さず、装置の使用時期の決定に貢献してくださいます。患者様とご家族そして私たち歯科医療従事者が同じ目標に向かって協力し合えることが、特に成長発育のコントロールには欠かせないとつくづく思います。初めは顎外装置、抵抗があるかもしれませんが、ご一緒に頑張りましょう!
雪
<篠崎公園にて >
昨日は久しぶりに雪が積もりましたね。積もった雪を見ると、開業した年の冬に大雪になった時のことを思い出します。御近所の方にスコップをお借りしたり、雪かきの仕方を教えていただきながらてんやわんやでした。何とか診療時間までには玄関周りの雪はかいたのですが、思いのほか重労働でした。御近所の皆様のほうが私たちよりずっと年配なのに手際良く雪かきされているのを見てすごいなぁと思ったものです。患者様でもあるご近所の皆様、開業以来大変お世話になっております。これからもよろしくお願いいたします。
アクティブプレート
<術前> <床装置で加療後4ヶ月後>
犬歯間の距離が狭くその割に歯牙の大きいお子様です。真ん中から2番目の大人の歯が後ろへ萌えてしっまってその歯だけ上下の歯のかみ合わせが逆になっています。このまま永久歯が萌えかわっていくと重度の叢生になる可能性が高く抜歯ケースに移行しそうなケースです。フルブラケットでの治療や長期にわたる治療は望まれていませんでしたので、横幅の改善をしながら後ろに下がっている歯を前に出す治療を半年を目標に、床装置にワイヤーを付与したアクティブプレートで治療しました。
4か月で後ろに下がっていた歯のかみ合わせは改善しました。犬歯間はもう少し拡大したかったのですが、患者様はサッカー少年でスポーツに集中したいとのことで、主訴の改善が為された時点で夜間のみ保定として装置を4か月使用していただいた後、経過観察に入っています。カリエスリスクテストでハイリスクでしたので、ブラッシング指導やスポーツドリンクのとり方など虫歯予防についてもかなりしっかりとさせていただきました。
反対咬合
<術前> <床装置で加療3ヶ月後>
反対咬合(受け口)は咬合誘導だけで治療するのは難しいうえに、小さい頃に治療して仮に一見治ったように見えても大人になるまでに再発してしまうことの多いケースです。患者様との信頼関係を考えると、安易に咬合誘導だけで治りますよとは言えません。必ず、ブラケットをつけた本格矯正や、顎外装置の使用の必要性、また重度の反対咬合の場合は外科処置や抜歯などが伴う可能性もお話ししておかなければなりません。
ただし、反対咬合の中でも歯性の反対咬合は咬合誘導で短期間で治り後戻りもありません。歯性の反対咬合というのは上の前歯の萌える位置が正常より後ろだったり、下の前歯が正常より前方にはえてきてしまった場合に起こります。上の前歯の位置異常による反対咬合は咬合誘導の最も得意とするケースです。驚くほど簡単に治ってしまいます。下の前歯が前方に出てしまうのは、悪習癖に起因することが多いのでその改善ができればやはり簡単に咬合誘導で治すことができます。また、上顎の劣成長による反対咬合も比較的簡単に咬合誘導で治せます。でも、いずれのケースも適切な時期に治してあげられなければ、その位置で全ての永久歯がはえ揃って顎もその大きさに合わせて成長してしまうので難しいケースに移行してしまいます。
上下の真ん中の前歯2本の永久歯が萌え始めてしっかりとはえ揃う前までがいちばん簡単に歯性の反対咬合や上顎の劣成長が原因の反対咬合を治せる時期かと思います。お子様のお口の中ちょっとご覧になってみてください。